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28:2004/7

<企業を伸ばす利益管理手法について>

T.はじめに
  ここでいう利益管理手法とは、試算表や損益計算書に表示される財務的な利益管理を指すのではありません。財務的な数値を形成するところの、現場データによる利益の管理手法をいいます。即ち、営業日報、生産日報、回収管理日報、工事台帳など、現場データを前提とした、利益管理のあり方を意味しています。この現場データを利益管理として把握する手法は、経営における意志決定と、意志決定に至るまでの進捗評価の支援という役割を期待されています。現場の利益管理手法を構築する事で、「経営のイレギュラーチェック」の仕組みを定着させたいものです。それでは、製造業、卸売業、小売業、運送業、建設業の5業種について、利益管理手法のポイントを見る事にします。

 
U.5業種の利益管理手法のポイント
  1. 製造業
      製造業は、これまでにも多くの識者が述べてきたように、その基本的な利益管理手法は、部門別業績管理といわれるものです。簡単にいうと、目標(標準)原価と実際原価の把握単位をどこに求めるかに尽きます。基本は製品単位なのでしょうが、これがなかなか思うようにいかないのが現実です。そこで、企業の実態に合わせて、工場別とか、生産部門別とか、生産地域別とかいう範疇で括って原価計算をし、製造原価を把握する事になります。この原価計算の括りが、結局のところ利益管理にも影響してきます。つまり、工場別に、生産部門別に、あるいは生産地域別にという部門別業績管理になるからです。流れとしては、

    1,利益管理単位毎の生産データと原価データの把握
    2,製造費用の変動費と固定費の区別
    3,販売管理費用の変動費と固定費の区別
    4,共通費の賦課と配賦
    5,金利などの財務費用の割り振り

    という事になります。製造業の利益管理手法のポイントは、原価計算単位をどの部分まで掘り下げるかに尽きます。
     
  2. 卸売業
      卸売業の場合、現在、最も付加を稼ぎ出すのが困難な業態だといえます。他から仕入れたものに一定の粗を付加して事業者に販売する卸売業の場合、一言でいえば、営業担当者別の「貢献利益」をいかに把握するかに尽きます。利益管理の把握単位としては、担当者別がベストですが、営業部門別、販売地域別、商品別毎でもかまいません。こうした把握単位毎に、売上高、仕入原価、粗利益、販売コスト(販売手数料、旅費交通費、接待交際費など)、間接費(共通費)、金利コストを把握して「貢献利益」を算出し、この貢献利益が計画(目標)値を超えている場合には、報奨金や賞与を支給するといった、現場データに裏付けられた管理手法(インセンティブ手法)を取り入れる事がポイントです。
     
  3. 小売業
      小売業における利益管理は、不特定多数を相手にしているだけに、得意先別採算といっても、あまり意味がありません。一般論としては、商品別の利幅の把握と在庫の把握に尽きます。いわゆる「売れ筋商品」の把握と商品の品揃えの兼ね合いです。利益管理表としては、商品別販売効率表があります。把握単位としては商品別がベストですが、商品群あるいは店舗別と捉えても良いです。商品別販売効率表は、商品毎に、売上高、粗利益、売り場面積、購売客数、購売点数、在庫残高、従業員数などのデータを取って、1人当たり売上、1平方メートル当たり売上、粗利益率、在庫回転率、売上構成比率、交差主義比率などを算出して、商品の販売効率を見極める事で、商品別の利益管理を行うとするものです。
     
  4. 運送業
      一般に運送業の利益管理手法の把握単位は車両です。もちろん、運送部門とか、保管・倉庫部門とか、荷役・梱包部門といったような部門管理手法もありますが、中小企業の場合は、このような部門管理は出来ないのが実情です。従って、車両毎に、運送収入、変動費、固定費を算出して、車両毎の貢献利益を見極めるのが業績管理上ベターです。即ち、運送収入は運転日報で把握し、運送業の主要コストである燃料費、修繕費、消耗品費などについては、業者からの請求明細書で把握できます。このようなシステムで車両毎の貢献利益を計算し、現場データ(走行距離、積載トン数、走行時間、実働時間など)との連動により、走行距離当たり収入、実働時間当たりコスト、積載当たり限界利益といった、利益管理指標を求める事が出来ます。
     
  5. 建設業
     建設業の利益管理手法は、個別現場の原価を工事進捗度に応じて、すばやく把握する仕組みを確立する事に尽きます。その意味で積算と実行予算の管理は重要です。受注するための見積原価があって、それを基礎に決定された請負契約価額を前提として実行予算を組みます。実行予算を組んだら、利益管理を実行するために、工事原価管理と工事進捗管理を実践します。このような一連の行動を具体化したのが工事原価管理台帳です。この管理台帳を使って、材料費、労務費、現場経費、外注費がどのように工事の進捗に伴って累積していくかを管理し、結果として実行予算利益(目標利益)の達成を図るのが、建設業の利益管理手法です。

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