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32:2005/1

<資産の圧縮で生まれる経営資金について>

T.はじめに
 資金不足となれば、誰もが金融機関からの借入を考えますが、経営計画等から事前に資金不足が把握できれば、ある程度の期間は要しますが、自助努力で経営資金を生み出すことが出来ます。もちろん、 取引先等との契約条件の変更などを伴う事もあり、慎重な判断と行動、及び時間を要する点も考慮する必要がありますが、資産圧縮による経営資金の創出について事例を交えながら見る事にします。
 
U.事例の概要
  1. C店の経営データ

    年商

    1,500,000千円
    月商 125,000千円
    1日当り売上 4,160千円
    1日当り仕入 3,300千円
  1. 要約貸借対照表

    (単位:千円)

    科 目 期 首 期 末 増減欄   科 目 期 首 期 末 増減欄
    受 取 手 形 510,000 480,000 30,000   支 払 手 形  300,000 330,000 30,000
    売   掛   金 280,000 260,000 20,000   買   掛   金 200,000 200,000 0
    棚 卸 資 産 180,000 160,000 20,000   割 引 手 形 490,000 440,000 50,000
    現 金 預 金 20,000 80,000 60,000   税引前利益 10,000 10,000
    合        計  990,000 980,000 10,000   合         計 990,000 980,000 10,000

    style="FONT-WEIGHT: 400">  (注)手持手形残高(20,000) (40,000) (20,000)

  1. キャッシュフロー計算書 

    (単位:千円)

    (  使  途  ) 金   額 (  源  泉  ) 金   額
    割 引 手 形 50,000 受  取 手 形 30,000
        売     掛     金 20,000
        棚 卸 資 産 20,000
        支 払 手 形 30,000
        税 引 前 利 益 10,000
    合       計 50,000 合       計 110,000
    差  引  資  金  増 60,000    
     

       
      手許資金が増加した分 手持手形(増) 20,000千円 
  1. 改善目標

    (1) 受取手形 30,000千円 ÷ 4,160千円 = 7.2日 日数短縮 (営業部)
    (2) 売掛金 20,000千円 ÷ 4,160千円 = 4.8日 日数短縮
    (3) 棚卸 20,000千円 ÷ 4,160千円 = 4.8日   日数短縮   (営業部、商品管理部、資材部)
    (4) 支払手形 30,000千円 ÷ 3,300千円 = 9.1日 日数延長   (資材部)
    (5) 割引手形    金利低減   (経理部)

     

V.改善事項の内容
  1. 受取手形について
    style="FONT-WEIGHT: 400">  手形入金の都度、サイトに強い関心を持ち、1日でもサイトが伸びていることのないよう目配りをする。サイトの短縮へ向けて交渉を怠らない。
     取引先担当者は、クレームには最大限の注意を払い、顧客に信頼と喜んでもらえる仕事振りを示してこそ実現できることを忘れないようにします。
     
  2. 売掛金について
    style="FONT-WEIGHT: 400">  契約時に支払条件を明確にする。そして、与信管理基準を設定して、基準を満たしていない顧客に対しては、時間をかけて改善要望書を提出して実現に向け継続的に努力します。
     営業担当者は、回収をいかに早く行うかを常に考え行動する。ただし、クレームを完全に解決することが条件となります。
     
  3. 棚卸資産について
    style="FONT-WEIGHT: 400">(1) style="FONT-WEIGHT: 400"> 割り引き・値引き率に惑わされて纏め買いをしていないか、商品の回転率、資金効率を考えた行動をとる。
    style="FONT-WEIGHT: 400">(2) style="FONT-WEIGHT: 400">欠品が生じないように、システムは万全か検討する。
    style="FONT-WEIGHT: 400">(3) style="FONT-WEIGHT: 400">返品、不良品の管理を徹底する。
    style="FONT-WEIGHT: 400">(4) style="FONT-WEIGHT: 400"> 商品棚などの整理整頓ができているか、いつでも全ての在庫商品が見えて、容易に取り出せる状況になっているかチェックする。
    style="FONT-WEIGHT: 400">(5) style="FONT-WEIGHT: 400"> 商品、製品は、お札の束であるという意識を持つこと。倉庫でお札を踏みつけていないか。倉庫は大きな金庫でもあります。


     

  4. 支払手形について
    style="FONT-WEIGHT: 400">  回収手形のサイトと支払手形のサイトのバランスを考えた支払を行っているか検討する。 
     例えば全額手形回収であれば、
    受取勘定 125,000千円 × サイト90日 = 11,250,000
      限界利益率を20%とすると(125,000 × 80% = 100,000千円)
        ↓
    支払勘定 100,000千円 × サイト(I) = 11,250,000
      I = 112.5日


     

  5. 割引手形について
    style="FONT-WEIGHT: 400">  必要な時に、必要なだけ割り引く。受取手形、売掛金等の資産の圧縮を行えば当然に手許資金は増加するので割引の実行額の減少を伴い残高も漸減する。この舵取りを担当部門がしっかり行えば金利の節減にもなります。
     
  6. 手形・現金の支払比率を見直す
    style="FONT-WEIGHT: 400">  現金でなければならない取引先、手形でも可能な取引先を区別する。少しでも手形支払にすることで、資金の調達になることを認識し、可能なところは手形へ切り替える。ただし、手形決済資金の配慮を十分に行う(不渡事故による倒産のリスクも考えること)。
     支払手形増額30,000千円は、従来月当たり手形振出額が100,000千円であったものを10,000千円の増加振出を行うことで調達は可能となる。取引先の業態、規模などにより、手形が小口化して困難を伴うことも当然あるが、このような考え方を常に持ち資金に対する工夫を行う必要があります。

 以上のような改善を行った結果、期首の手許資金が20,000千円だったのが期末時には60,000千円増加して80,000千円(別途受取手形20,000千円)と、資金負担の大幅な改善となった。単に金融機関から借入調達するのではなく自助努力により14日分(60,000千円 / 4,160千円 = 売上ベース)の資金が獲得できた意味は大きいといわなければなりません。

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