b-post > ビジネス情報 > 法務> 印章の法的役割と種類

15:2003/04


印章の法的役割と種類

1.印章の一般的法的役割
 今日、日本においては、押印は自署(サイン)よりも重要視されている。すなわち、文書などに押印することは、印章所持者の確定的意思の表示と解されている。そこで、まず、印章が使用されたとき、すなわち印影にどのような法的意味があるかをみてみよう。

@有力な証拠としての意味
 本人又はその代理人の署名または捺印のある文章は、これを真正なものと推定する。この規定により本人(または代理人)の押印のある文章は、該印影は本人などの意思に基づいて顕出されたものと事実上推定され、文書の全体が本人(または代理人)の意思により作成されたものと推定される。

A偽造の場合の扱い
 有印私文書偽造・変造の罪は、3ヶ月以上5年以下の懲役に処せられるが、無印私文書偽造・変造の罪は、1年以下の懲役または10万円以下の罰金に処せられ、前者のほうがはるかに重い処罰を受ける。

B法令上押印が要求されるもの
 遺言は、遺言者の死後に効力が生ずるものなので、本人の意思を確かめる方法として、自筆証書遺言の場合、遺言書に本人の押印を要求している。また、官公庁に対する各種届出書には、 押印が要求されるものが多い。

2.印章の種類
 会社の印章には、会社を示す印(社印)のほか、代表者の印、銀行員、各担当役職者の印がある。

@代表者印
 会社の印章で最も重要な印は、代表者印として法務局に印鑑届けをしている印章で、会社の実印といわれるものである。会社によっては、代表者は上記の届出印のほかにいくつかの代表者印を作って用途別に使い分けをしているが、これら届出印以外の印は代表者の認印ということになる。

A銀行員
 銀行と当座引当をするには、銀行に印鑑を届け出なければならないが、一般的には、上記代表者印とは別の印鑑を届け出ている。この銀行に届け出た印章を銀行員という。

B社印
 「○○株式会社之印」などと社名が刻まれている印で、通常は一辺が2〜3センチメートルの正方形で四角いところから、俗に各印といわれる。社員は会社の外部に対して発行する文章に社名に重ねて押印されることが多いが、会社の認印の一つである。

C役職者印
 「○○取締役之印」とか「○○部長之印」「○○支店長之印」などと役職者名の刻まれた印章で、それぞれの役職上使用する会社の認印である。

3.印章の法的役割
@代表者印
 この印影については、法務局で印鑑証明書を発行してくれる。そこで、個人の場合の実印と同じ役割を果たす。契約書類に代表者印を押印し、印鑑証明書を添付すれば、会社の代表 者が契約を行ったという重要な証拠になるわけである。
 会社の役員変更登記などの商業登記申請では、申請書や委任状にこの代表者印を押印することが必要である。
 また、不動産を売却したり担保を設定する際に行う不動産登記のための委任状に押印する。印鑑証明書の添付を要するような重要な文書には、当然この代表者印の押印が求められる。

A銀行員
 銀行との当座勘定取引契約に基づき印鑑を届け出た後は、届出印の使用によってのみ預金の払い戻し、手形・小切手の振出しができる。
 銀行は、届出の印鑑と符号する印影と認めて支払いをしたうえは、仮に無権限者による払い戻し請求や、手形・小切手の振出しであったとしても、また偽造の印影だとしても、免責されるから、この銀行印の取扱いは慎重でなければならない。
 銀行の印鑑照合について、最高裁判所は「照合事務に習熟している銀行員が・・・相当の注意を払って熟視するならば肉眼をもって発見しうるような印影の相違が看過されたときは、銀行側に過失の責任がある」としながら、「届出印鑑の印影と当該手形上の印影とを照合するにあたっては、特段の事情のないかぎり、折り重ねによる照合や拡大鏡などによる照合するまでの必要はなく、肉眼によるいわゆる平面照合の方法を持ってすれば足りる」としている

B役職者印
 この印章は、対外的に注文書その他担当職務内の契約書に押印使用するほか、社内的には稟議書などに押捺される。
 役職者は、その担当職務に関しては、会社を代理する権限があるから、役職者がその肩書きを付して役職者印を押捺し、契約を締結した場合、その効力は会社に及ぶ。
 また、稟議書などに役職者印の押印を求めるのは、責任の所在を明らかにするためのものである。

 


BACK


Copyright (C) 2003 b-post.com. All Rights Reserved.