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32:2005/2

 

<企業のコンプライアンスについて>

T.はじめに
 最近、牛肉偽装事件、利益供与事件、リコール隠し事件等、企業の不祥事が相次いでます。経済誌等でも、企業のCSR(社会的責任の推進度)ランキングが特集されるくらいです。今日ほど、企業のコンプライアンス(法令や諸制度、規則、倫理等の厳守)が強く求められている時代はないと言えます。このコンプライアンスの社会的要請は、抽象零細企業も例外ではない訳で、しっかりとした取組が求められています。利益追求や不正競争、及び管理怠慢等による法令違反や不祥事は、法的責任や社会的・道義的責任を問われる事になります。そこで今回は、企業のコンプライアンス体制の仕組み作りについて見る事にします。
 
U.コンプライアンス体制の仕組み作り
  1. 行動準則としての社内ルールの確立
     何が法令違反かと明確にして、遵守すべき内容を社内規則として整備する事です。即ち、社内規則という形で問題になりやすい項目ごとに守るべきルールの内容、範囲を規定し、さらに社内規定を受ける形で具体的に抑止すげき事項を「行動マニュアル」として明確にすることが必要です。特に、法令違反に結びつきやすい行為については、禁止事項として明確にし、服務規律として社員に配布すべきです。
     
  2. 内部牽制制度の確立
     内部牽制の目的はあくまでも法令違反(ルール違反)を予防する事にあります。内部牽制としては、技術的牽制(技術的な仕組みとしてルール違反が出来ない構造にする事)や、組織的牽制(コンプライアンス委員会とか内部牽制委員会等のように、部門や責任者が組織として牽制しようとするもの)が考えられますが、要は、法令違反をしようとする行為を心理的に抑制する仕組みの導入にほかなりません。
     
  3. 社内通報制度の整備
     社内通報制度とは、社内における法令違反行為(ルール違反行為)を、早期に発見し、是正する事を目的とします。社内の法令違反の事実を確実に発見し、不祥事に発展する事を防止できる制度を確立するためには、社内通報制度が常備され、機能する事が必要です。大会社などでは、この役割を内部牽制制度が担っているところもあるようですが、中小零細企業の場合、人員の問題もあり、社内 通報制度を活用すべきです。
     
  4. 社内規定(ルール)違反と処分
     コンプライアンス規定に対するルール違反は、原則として処分の対象とすべきです。処分の内容は、ルール違反の程度によりますが、服務規程としての実効性を確保する観点からもルール違反行為に対しては処分を課す必要があります。
     なお、コンプライアンス規定の雛形例の概要を示せば以下の通りです。
     

(総則)
第1条 この規定は当社におけるコンプライアンスについて規定する。

(定義)
第2条 この規定において「コンプライアンス」とは、法令(行政上の通達・指針等を含む)、社内規則及び企業倫理の厳守をいう。

(経営方針)
第3条 会社は別に定める企業倫理行動指針に従い、コンプライアンスを経営の方針とする。

(社員の責務)
第4条 社員は前条の方針をふまえ、法令を厳守することはもとより企業倫理を十分に認識し、社会人としての良識と責任をもって行動しなければならない。

(社員の禁止事項)
第5条 社員は次に揚げる行為を行ってはならない。

  1. 自ら法令及び社内規則に違反する行為
  2. 他の社員に対して法令及び社内規則に違反する行為を指示・教唆する行為
  3. 他の社員の法令及び社内規則に違反する行為を黙認する行為

(通報)
第6条 社員は他の社員が前条に違反する行為を行っていることを知ったときは、別に定める社内通用規則の定めるところに従い、速やかにコンプライアンス統括室に通報しなければならない。

(懲戒処分等)
第7条 会社は第5条の規定に違反した社員を就業規則の定めるところに従い懲戒処分に付するとともに、会社に損害を与えた社員に対して損害の賠償を求めることができる。
 社員は次に揚げることを理由として責任を免れることはできない。

  1. 法令について正しい知識がなかったこと
  2. 法令に違反しようとする意思がなかったこと
  3. 会社の利益を図る目的で行ったこと

(事前相談)
第8条 社員は、自らの行為や意思決定が第5条に違反するかどうかの判断に迷うときはあらかじめコンプライアンス統括室相談窓口に相談しなければならない。
 


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