学校の保健室のように地域の中に気軽に相談できる場所を設けよう。日本看護協会（東京）のそんな呼びかけで、各地の看護師・保険師たちによる「まちの保健室」作りが進んでいる。駅や郵便局などに定期的に相談コーナーを設置、血圧や体脂肪の無料測定に応じる試みで、中高年を中心に好評だ。
　愛知県扶桑町にある扶桑郵便局では、毎月２３日の「ふみの日」になると、ロビーの一角に体重計や血圧計が持ち込まれる。地元の愛知県立看護大学教員らが昨年から始めた「まちの保健室」だ。
　毎回、同大教員や同町役場の保険師３人前後が参加、健康相談に応じる。郵便局に用を済ませに来た人や近所の人が「最近肥満気味で」「コレステロール値が気になって」などと相談に訪れ、にぎわっているそうだ。
　同大助教授の大須賀恵子さんは「保健センターなど公的な施設での受診者は年々減っています。郵便局なら、用事の途中でも気軽に利用できる。町の人からも、『ゆっくり相談ができる』と好評です」と説明する。
　「まちの保健室」活動は、２年前、日本看護協会が「看護師たちにもっと地域の中で活躍してほしい」と始めた。
　各地の看護師らがボランティアなどで参加、ふだんの健康管理の「アドバイザー役」を務めてもらおうという試み。同協会が運営費も助成している。
　千葉県看護協会が先月スタートさせた「保健室」は、主に女性がターゲット。千葉市内のデパートの健康用品売り場にコ ーナーを設け、週２回、更年期の過ごし方などもアドバイスする。
　また、和歌山海南市でも、海南市民病院の看護師たちが先月からＪＲ海南駅の改札前で週１回開いている。「サラリーマンもよく利用します」という。
　このほか、国道にある「道の駅」、地域の集会所、訪問看護ステーションなど設置場所も様々で、これまでに２２都道府県に広がっている。同協会では、「いろいろな場所に『保健室』ができて、健康増進に役立ってくれれば」と期待する。
　この試みについて、東京大学教授（地域看護学）の村島幸代さんは、「健康状態は気になっているが病院や自治体の相談窓口に行くほどではないと、そのままにしている人は少なくない。身近な場所で 専門家のアドバイスが聞ける窓口が増えるのはいいことです」と話す。

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