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仕訳について
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仕訳とは、日常業務の取引事実をそれぞれの勘定科目の名称をもって、借方と貸方に振り分ける手続処理をいいます。
(1)勘定科目は貸借対照表勘定科目と損益計算書勘定科目とに大きく分類され、前者は資産・負債・資本の勘定科目に、後者は費用・収益の勘定科目とに区分されます。
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1)貸借対照表の勘定科目 |
A.資産勘定
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- 現金預金
文字どおり現金のほか、他人が振り出した小切手、送金為替手形等および金融機関に預け入れた当座預金、郵便貯金、普通預金を総称します。
- 受取手形
他人が振り出した約束手形等を受取った場合で、まだ支払期日がきていない手形をいいます。
- 有価証券
会社が一時的に所有している取引相場のある株式や社債をいいます。
- 売掛金
得意先に製品等を販売した場合に、まだ代金が未収の状態にあるものをいいます。
- 未収金
日常のおもな営業活動以外で生じた機械等売却代金でまだ入金のないものをいいます。
- 立替金
一時的に得意先・仕入先・従業員等に立替払いしたもので後日現金で返済される金額をいいます。
- 前渡金
商品、製品を仕入れるにあたって、前もって一部代金を相手に支払った場合の金額をいいます。
- 前払費用
今期に支払った費用のうち、今期末までに、まだ役務の提供を受けていないものをいいます。
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棚卸資産(商品・製品・原材料・貯蔵品・仕掛品等)
-
有形固定資産(土地・建物・工具器具備品・構築物等)
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無形固定資産(特許権・意匠権・漁業権・鉱業権・営業権等)
形のない一つの権利としての固定資産をいいます。例えば、他人所有の土地を借用した場合に支払う権利金は、
無形固定資産としての借地権となります。
- 投資等
会社の本来の営業目的ではなく、他の会社の支配、統制または利殖等を目的として余裕金を投資する金額をいいます。例えば、出資金とか、投資有価証券とか関係会社社債、子会社株式とかいった勘定科目があります。
- 繰延資産
役務の提供が行われ、支払いも済んでいるが、役務が当期に対応するだけでなく、次期以降もその効果が及ぶ場合に設けられる勘定科目をいい
ます。例えば、創業費(会社設立時の費用)や開業費(土地建物の賃借料等の開業準備費用)、開発費(市場開拓等の費用)、新株発行費(増資等にかかる費用)等をいいます。
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B.負債勘定
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- 支払手形
材料仕入等に際して振り出した約束手形や自社宛ての為替手形の支払いを引き受けるような場合の手形でまだ支払期日のきていないものをいいます。
- 買掛金
商品等を仕入て、代金をまだ支払っていない金額をいいます。
- 未払金
商品仕入代金以外の物品の未払額をいいます。
- 未払費用
販売費と一般管理費、営業外費用等の経費の未払額をいいます。
- 短期借入金
会社の営業活動に必要な資金を銀行等から借入したもので、一年以内に返済をしなければならない金額をいいます。
- 預り金
営業活動と関連して預ったお金や、従業員の源泉徴収税等で一時的に預っておき後日必ず現金で支払う必要がある負債です。
- 前受金
商品は販売したが、まだ現物としての商品の引き渡しを終わっていない場合に受け取った代金の一部です。
- 仮受金
原因不明のお金が入金し、一時的に受け取っておく場合はすべて仮受金で処理します。
- 前受収益
契約に基づいて継続的に役務を提供する場合の収益となる賃借料や受取利息などにおいて、まだ、提供していない分についての支払いを受けたものをいいます。
- 固定負債
決算日から起算して一年以上後で、返済期限のくる負債金額をいいます。代表的な勘定科目に社債(長期資金を調達するために会社が発行した債権)、長期借入金
、長期支払手形等があります。
- 引当金
将来発生する可能性の高い特定の費用等の支出に備えて、その金額を事前に合理的な方法で見積り、当期の費用として繰り入れられるもの
をいいます。例えば、返品調整引当金、賞与引当金、修繕引当金、退職給与引当金、売上割戻引当金、貸倒引当金等があります。
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C.資本勘定
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- 資本金
株主等が企業に投下した元手をいいます。
- 資本準備金
企業の営業活動によるものでなく、合併や増資・減資といった資本取引によって生じた剰余金をいいます。
株式払込剰余金、減資差益、合併差益等があります。
- 利益準備金
資本準備金と合わせて資本金の1/4に達するまで剰余金の配当により減少する剰余金の額の1/10以上を積み立てたものをいいます。
- 剰余金
任意積立金、別途積立金等、株主総会の決議で、留保金として積立てられたものと、繰越利益剰余金からなります。
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2)損益計算書の勘定科目 |
A.収益勘定
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- 売上高
商品を販売して得た収益
- 受取利息
銀行預金、貸付金の利息
- 雑収入
営業活動に間接的に関連のある収益で、その発生が極めて少なく、金額が少額なものをいいます。
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B.費用勘定
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(注)勘定科目については、一般に公正妥当と認められる会計慣行を要約した中小企業の会計原則に定められた科目を使用するのが慣行とされています。 |
(2)仕訳
営業活動によって起こる取引は、必ず資産、負債、資本そして収益と費用のどれかに増減をもたらしますが、これらの科目を交通整理するのが仕訳という事になります。仕訳を行う場合の複式簿記の原則については、第一回の
講座で学習していますのでこの原則にのっとって、簿記一巡の手続きと関連させながら仕訳を考えて行きたいと思います。
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1)開始取引と仕訳 |
決算において、各勘定が締め切られると同時に、資産、負債、資本の各勘定残高の次期繰越について開始記入を行う事になるわけですが、この開始取引の記帳を開始仕訳といいます。
(設例1)(株)東京商事の第18期の貸借対照表は、次のとおりでした。開始仕訳を行って下さい。
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貸借対照表
平成15年1月1日 |
(単位:円) |
現金預金
受取手形
売 掛 金
商 品
貸 付 金
前払費用
建 物
備 品 |
220
130
250
700
400
11
1,000
800 |
支払手形
買 掛 金
未払費用
借 入 金
資 本 金
利益準備金
未処分利益
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120
270
8
1,000
1,500
500
113
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3,511 |
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3,511 |
(答)開始仕訳
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(借)現金預金
受取手形
売 掛 金
商 品
貸 付 金
前払費用
建 物
商 品 |
220
130
250
700
400
11
1,000
800 |
(貸)開始残高 |
3,511 |
(借)開始残高 |
3,511 |
(貸)支払手形
買 掛 金
未払費用
借 入 金
資 本 金
利益準備金
未処分利益 |
120
270
8
1,000
1,500
500
113 |
(借)保険料 |
11 |
(貸)前払費用 |
11 |
(借)未払費用 |
8 |
(貸)支払地代 |
8 |
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2)営業取引と仕訳 |
営業取引とは、企業の目標活動として本来の営業の遂行上生じた取引を総称するものです(損益計算書上は、営業取引を営業損益、営業外損益、特別損益に区別しています
)。
A.購入取引
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(例)材料8,000円を仕入、このうち、小切手で3,000円、掛で2,000円、残高は約束手形の振出しで支払った。 |
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(借)仕入 |
8,000 |
(貸)当座預金
買掛金
支払手形 |
3,000
2,000
3,000 |
B.販売取引
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(例)製品を10,000円で販売し、このうち、普通預金へ振込が5,000円、約束手形で受取ったのが3,000円、残高は掛とした。 |
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(借)普通預金
受取手形
売掛金 |
5,000
3,000
2,000 |
(貸)売上 |
10,000 |
C.固定資産取引
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(例)かねて建設中の事務所建物が完成したので引渡しを受けた。この契約価額は、1,000千円でうち850千円については支払済みで、残額は3ヶ月後に支払うことにした。なお、この新築によって、当面の新築計画がすべて完了したので、新築積立金900千円は、全額取り崩すことにした。 |
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(借)建物
新築積立金 |
1,000
900 |
(貸)建設仮勘定
未払金
新築積立金取崩額 |
850
150
900 |
D.手形取引
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(例)不渡手形1,200千円のうち、500千円を預かり補償金で補填し残額は貸倒れとする。 |
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(借)(預り補償金)
(貸倒損失) |
500
700 |
(貸)不渡手形 |
1,200 |
E.投資取引
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(例)期中に一時所有していた甲商事株式会社の株式(帳簿価格1,300千円)を3,100千円で売却した。 |
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(借)現金預金 |
3,100 |
(貸)有価証券
有価証券売却益 |
1,300
1,800 |
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3)決算取引と仕訳 |
@決算手続き
決算手続きとは、会計帳簿に記録、計算された営業取引の結果を整理、集計して一定期間における企業の経営成績と期末の財務状態とを算定する手続きを総称していいます。
A決算整理事項
1)費用に関するもの
A.売上原価の測定
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(例)期首製品1,500千円、当期製品製造原価27,300千円であり、期末製品は帳簿棚卸高が、1,700千円、実地棚卸高が1,600千円である。 |
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(借)製品
繰越製品
製品評価損 |
1,500
1,700
100 |
(貸)繰越製品
製品
繰越製品 |
1,500
1,700
100 |
B.現金過不足の修正
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(例)決算にあたり、過日の現金過不足200千円の原因が明らかでないので雑費で処理した。 |
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(借)雑費 |
200 |
(貸)現金過不足 |
200 |
C.貸倒引当金の計上
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(例)期末売上債権について、160千円の貸倒引当金を設定する。 |
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(借)貸倒引当金繰入 |
160 |
(貸)貸倒引当金 |
160 |
D.減価償却費の計上
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(例)固定資産について、125千円の減価償却を行う。 |
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(借)減価償却費 |
125 |
(貸)減価償却累計額 |
125 |
E.引当金の設定
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(例)退職給与引当金を毎期の従業員給与支払総額(230,000千円)に対し、2%の引当金を設定した。 |
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(借)退職給与引当金繰入 |
4,600 |
(貸)退職給与引当金 |
4,600 |
F.未払費用の計上
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(例)営業費について、65千円の未払いがある。 |
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(借)営業費 |
65 |
(貸)未払営業費 |
65 |
2)収益に関するもの
A
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(例)既に利払期が到来している社債券の利札35千円がある。 |
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(借)現金預金 |
35 |
(貸)有価証券受取利息 |
35 |
3)期間標準化に関するもの
A
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(例)創立費1,500千円につき、5年間の均等償却を行う。 |
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(借)創立費償却 |
300 |
(貸)創立費 |
300 |
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