2006年7月21日改訂

  1. 決算書ってなに?

  2. 損益計算書の見方

  3. 貸借対照表の見方

 

 


決算書ってなに?

決算書とは、企業の決算手続きに基づいて、作成される決算報告書をいい、一般に財務諸表といわれています。財務諸表は、その報告の目的により、会社法、証券取引法、法人税法等により、作成する事が義務づけられていますが、財務会計の最終目的が財務諸表の作成にあることから、財務会計を制度会計と呼ぶ事もあります。なお、それぞれの制度により、規定されている財務諸表の書類は、以下のとおりです。

<図1>

目的 裏付けとなる
法律
作成方法を
規定する規則
財務諸表の名称 対象会社
株主をはじめとする利害関係者の保護 会社法 会社計算書類規則 ・貸借対照表
・損益計算書
・個別注記表
・株主資本等変動計算書
すべての会社
投資家の保護 証券取引法 財務諸表規則 ・貸借対照表
・損益計算書
・キャッシュフロー計算書
・利益処分計算書又は
 損失処理計算書
・附属明細表
上場会社又はそれに準ずる会社
課税所得の
算定
法人税法 法人税施行規則 ・貸借対照表
・損益計算書
・損益金の処分表
・勘定科目内訳明細書
・資本積立金額の増減明細書
すべての会社

以上のように、決算書類は、各制度により名称は異なりますが、内容については実質的に同じでありその代表は、損益計算書と貸借対照表です。従って、損益計算書と貸借対照表に見方について、これから学習していく事にします。

 

損益計算書の見方

損益計算書は、経営の場で一番身近に触れる計数資料の一つですが、損益計算書を見る場合、ただ漫然と売上、利益のみを見るのではなく、業績の傾向構成比率業界平均値との比較等様々な角度から分析を行い、総合的判断が行えるような習慣を身につけることが大切です。そのためには、まず損益計算書の構造を体系的に理解することが必要です。そこで、(1)売上原価と売上総利益(2)販売費及び一般管理費と営業利益(3)営業外収益・営業外費用と経常利益(4)特別利益・特別損失と税引前当期利益の四つに分類し、それぞれの意味するところを学習する事にします。

(1)損益計算書の体型(会社法計算書類規則による)
 商法計算書類規則に規定する損益計算書の体系は以下の通りです。

<図2>

損益計算書
自   年   月   日
至   年   月   日

〔経常損益の部〕
T 営業損益の部
(1)
(2)
売 上 高
売上原価
×××
×××
  (売上総利益) ×××

(3)

販売費及び一般管理費

×××
  (営業利益) ×××

U 営業外損益の部
(4)
(5)
営業外収益
営業外費用
×××
×××
  (経常利益) ×××

〔特別損益の部〕
T 特別利益 ×××

U 特別損失

×××
 (税引前当期利益) ×××

 

(2)売上原価と売上総利益

1)売上原価
売上原価とは、販売した商品や製品そのものの原価であり、売上高に直接対応する費用です。小売業の場合、販売する商品の購入に要した費用が売上原価であり、製造業の場合には、その販売する製品を製造するために要した費用が売上原価という事になります。

<図3>売上原価の計算

@小売業の場合   A製造業の場合  
 期首商品棚卸高
 当期商品仕入高
×××
×××
 期首製品棚卸高
 当期製品製造原価
×××
×××
 合  計
 期末商品棚卸高
×××
×××
 合  計
 期末製品棚卸高
×××
×××
 売上原価 ×××  売上原価 ×××

製造業の場合には、小売業の商品仕入高に相当するのが、当期製品製造原価であり、これは、製造原価報告書の作成によって算出されます。

<図4>当期製造原価の計算

T 材  料  費
U 労  務  費
V 経     費
×××
×××
×××
  当期総製造費用
  期首仕掛品棚卸高
×××
×××
  合  計
  期末仕掛品棚卸高
×××
×××
  当期製品製造原価 ×××

 

<図5>製造原価の作成内容




材料費 原材料費、製造のための資材費等
労務費 製造に直接携わった人の人件費
工場を管理、運営する人の人件費
経 費 生産の一部を他社に委託した場合の外注費
工場の燃料費、高熱費、通信費等
工場の建物や機械等の減価償却費
工場の建物や機械等の固定資産税
その他の工場諸経費

ところで、売上原価や製造原価で、注目しなければならないのは、売上原価比率(売上原価/売上高)であり、製造原価に占める材料費や労務費、外注費等の占める割合が同業他社と比較してどうかという事です。

2)売上総利益
1.売上総利益は売上高から売上原価を控除したものを言い、いわゆる粗利益と呼ばれるものです。従って、売上総利益率(粗利益率)=売上総利益/売上高の高低は、その企業の収益力のバロメーターとなります。
従って、販売費及び一般管理費以下の費用を吸収しうるだけの粗利益率をあげていなければなりません。

2.売上総利益は、市場占有率、売価の設定、コスト(売上原価)に大きく左右されます。従って売上総利益を大きくするためには、

  イ.取引先件数を増やし販売量を増大させる
  ロ.取引先1件当りの取引量を増やし、全体の販売量を増大させる
  ハ.販売単価を上げ売上総利益率を高める
  ニ.材料仕入原価を引き下げる
  ホ.製造原価を引き下げる

と言う事が必要になります。
すなわち、A.どれだけ売るか、B.いくらで売るか、C.いくらで仕入れるか(作るか)の三つをコントロールしなければならないということです。
しかし、いくら売るかは、市場環境や取引先、得意先により制約を受けやすいので、企業の裁量の余地としては、生産性の向上や、コストダウンに極力努め、商品(製品)力の向上に、努力しなければなりません。

 

(3)販売費及び一般管理費と営業利益

1)販売費及び一般管理費
販売費とは、製品や商品の販売のための費用をいい、一般管理費とは、企業全体の管理のための費用をいいます。販売費と一般管理費は区分しにくい場合が多いですが、内容別に販売費、一般管理費を区別すると<図6>のようになります。

<図6>

  区  分 勘定科目 内  容
販売費及び一般管理費 人に関して発生する費用 役員報酬
従業員給料及び賞与
教育費
募集費等
役員の給料
役員以外の従業員の給料・賞与
研修会への参加、書籍の購入等、教育の為の費用
従業員等の募集の為の広告費等
顧客・市場に関して発生する費用 販売促進費
接待交際費
広告宣伝費
荷造運賃
景品,カタログ,販売奨励金等の販売増進費用
得意先仕入等の接待の為の費用
企業の知名度向上等の為の費用
得意先や営業所等への商品送付に伴う費用
設備に関して発生する費用 修繕費
賃借料
保険料
固定資産税
設備の修理の為の費用
事務所,倉庫,車両等の賃借料
建物設備等に対する保険料
建物,設備等に対する固定資産税
事務,通信,コミュニケーションに関して発生する費用 事務用消耗品費
通信費
会議費
事業税等
事務処理に伴う用紙,印刷等への費用
電話料金等通信に伴う費用
社内における打合せ,会議に必要な費用
事務所所在の道府県に支払う税金等

 

2)営業利益
  1. 企業の主な営業活動から生じた収益から、営業ならびにそれに付随する管理のために必要な費用を差し引いた利益で、営業活動による成果を表します。
  2. 売上高営業利益率(営業利益率/売上高)の高低は、販売費及び一般管理費のムダ使いのバロメーターを示し、経営効率の良否を表示します。従って、純粋な営業活動による成果であるため、営業利益がマイナスという事は、企業の営業活動の成果があがっていないという事を意味し、死にもの狂いの合理化を必要とします(個人の家庭に例えれば、毎月 の月給よりも、毎月の通常家計費の支出が多い事を意味します)。
  3. 売上高営業利益率は、会社本来の営業活動が生む営業収益力を表示しますので高いほど望ましく、過去と比較して落ち込んできた場合、あるいは、同業他社と比較して、大幅に低い場合には、昇給にその原因を分析しなければなりません。

 

(4)営業外収益、営業外費用と経常利益

1)営業外損益
  • 営業外収益
    企業が本来の目的とする営業活動以外から生じた収益をいい、受取利息、受取配当金、有価証券利息、有価証券売却益、投資不動産賃借料、雑収入等があり、いわゆる投資や財テク等の資金運用から生じる収益をいいます。
  • 営業外費用
    企業が本来の目的とする営業活動以外から生じた費用をいい、支払利息、手形割引料、有価証券売却損、社債利息、創業費償却等があり、いわゆる金融費用がこれにあたります。
2)経常利益
  • 営業活動による成果(営業利益)から、本来の営業活動以外の活動から生じた収益ならびに、金利の支払等の財務的費用を加減した後の利益で、企業の正常な状態での収益を表示します。
  • 従って、経常利益は営業損益と営業外損益とをたしたもので、いわば本業での実績と金融収支とを合わせた企業のトータルな収支を表すことから、当該企業の収益生のバロメーターとなるものです。
  • 売上高経常利益率(=経常利益/売上高)の高低は、当該企業の経営効率を示すものであるから、これが高い企業ほど経営基盤がしっかりしているということになります。
  • なお、経常利益は、企業の販売状況、顧客の動向、仕入れや生産状況、コストダウン、努力、商品力、営業力、管理の効率、販売力等、これらの経営のすべての状況を集約するところから、企業の総合力を評価する場合、重要な数値となり、銀行等もこの数字を重視しています。

 

(5)特別利益・特別損失と税引前当期利益

1)特別損益
  • 特別利益
     企業の通常の営業状態では、発生しないような事項、例えば臨時的に発生する収益(固定資産売却益や投資有価証券売却益)や、前期の損益修正益(過年度償却済 債権の取立額)等があります。このような企業の異常な臨時的な事態により生じた利益は、企業会計上区別して表示されます。

  • 特別損失
    企業の通常の営業活動に基づかない火災や災害により破った損失(火災損失や災害損失)や、異常な臨時的な事態により生じた損失(固定資産売却損)及び、前期の損益修正損(過年度減価 償却の不足修正額)等があります。

2)税引前当期利益
  • 税引前当期利益は、経常利益に特別利益を加え、これから特別損失を控除して表示します。従って、税金を払う前の利益ですから、税引前当期利益は当該事業年度の最終の利益を表示する事になります。

  • ただし、利益が出れば当然法人税を支払わなければならないわけでこの法人税等の税金を控除した当期利益が、会社の最終利益、つまり手取利益ということになります。

  • この当期利益は、増減は会社経営の義務である利益配当及び内部留保のバロメーターとなるもので、売上高当期利益率(=当期利益/売上高)は、会社の手取利益を売上高に対しどのくらいの割合で稼ぎ出すかを示すもので、この利益率の高低はその会社の最終的な儲ける力を表示するといえます。

 

貸借対照表の見方

損益計算書の見方を学習しましたので、貸借対照表の体系と貸借対照表の見方を学習することにします。

(1)貸借対照表の体系

1)貸借対照表の意義
貸借対照表とは、一会計期間末における企業資本の具体的な運用形態を表す資産と、その調達源泉を表す負債及び資本を対照表示し、企業の貸借対照表日現在における財務状態を表示する報告書です。
2)流動資産の構成
@現金及び金融資産 - 現金・預金(普通、当座、定期)、有価証券、自己株式
A受取債権 - 受取手形、売掛金、貸付金
B棚卸資産 - 商品、製品、原材料、貯蔵品、仕掛品
Cその他の資産 - 前払費用、未収入金、前渡金、受取収益
以上のように流動資産は、販売活動をしてはじめ現金化可能である棚卸資産と、短期に現金化可能である棚卸資産以外の資産すなわち、当座資産とに分類できます。

 

3)固定資産の構成
@有形固定資産 - 建物、構築物、機械装置、車両運搬具、土地等
 長期間(一年超)にわたって会社経営に寄与する形のある資産をいいます。
A無形固定資産 - 借地権、特許権、商標権、営業権
 形が具体的になくても、法律上の権利や経済的収益を生み出す強い事実は、会社経営に大きく寄与します。
B投資等 - 投資有価証券、長期貸付金、子会社株式等
販売とか生産に直接に関係しなくても、長期にわたって運用する資産、例えば長期にわたって投資運用する株式や長期にわたって融資する貸付金等については、換金価値つまり債務弁済能力を持ちます。

 

4)繰延資産の構成
@組織形成のための支出 - 創立費、開業費
A資金調達のための支出 - 新株発行費、社債発行費、社債発行差金
B研究、開発のための支出 - 開発費、試験研究費
これらは、すでに対価の支払いが完了し、又は支払義務が確定し、これに対する役務の提供を受けたにもかかわらず、その効果が将来にわたって発現するものと期待される費用をいい、その効果が 及び数期間に合理的な配分するため過的に貸借対照表上繰延資産として計上されるものです。

 

5)流動負債の構成
@仕入債務 - 支払手形、買掛金
A支払債務 - 借入金、未払金、前受金、預り金等
B引当金 - 賞与引当金、修繕引当金、製品保証引当金等
将来の特定の費用または損失であって、その発生が当期以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、かつその金額を合理的に見積ることができる場合に、当期の負担に属する金額を期間損益計算上、当期の費用又は損失として、見越計上したものです。
Cその他の債務 - 前受収益、未払費用等

 

6)固定負債の構成
固定資産とは、返済義務が一年を越える債務で、長期借入金や預り保証金(取引先から取引等の保証として長期に預かるもの)退職給与引当金等があります。

 

7)総資産の部の構成
@資本金 - 株主の払込資本のうち、会社法の規定により確定された額をいう。
A資本剰余金 - 資本取引(増資・合併・減資等)のプレミアムから成る資本準備金をいいます。
B利益剰余金 - 会社が剰余金の配当を実施した場合の配当額の1割以上を強制的に積み立てた利益準備金と会社が任意に積み立てた別途積立金や繰越利益剰余金からなります。

(2)貸借対照表の見方

1)貸借対照表の比較
貸借対照表の見方におけるポイントは、財政状態の内容を的確に把握する事ですが、この場合、同業他社の業界標準的な貸借対照表を入手して、それらの貸借対照表と比較する事ができれば一番望ましい事ですが、必ずしも手に入るとは限りません。
そこで、最も簡単かつ迅速に効果を発揮するのが、比較貸借対照表の作成による増減差額分析です。
このように、当期の貸借対照表を前期のそれと比較することにより、問題点や異常点を浮き彫りにする方法は、企業の財政状態を説明する場合の常識となっています。

 

2)貸借対照表の分析
貸借対照表の代表的な分析である比率分析では、流動性と安全性及び健全性とに分類され、以下のような内容になります。
@流動性 - 流動性とは、資産の現金化の度合いをいい、資金繰りに最も重要な企業の支払能力を表示します。この支払能力は、一般的に流動比率(=流動資産/流動負債×100%)で表示され、流動比率が100%を上回れば上回るほど支払能力に余裕がある事になります。
A安全性 - 安全性とは、資金調達の安全性の度合いをいい、企業の資金調達源泉の安全率を表示します。この安全率は一般的には、固定比率(=自己資本/固定資本×100%)で表示され、固定資産が100%を越えれば越えるほど固定資産を自己資本で調達する事になります。
B健全性 - 健全性は、事業資金の多くを何でまかなっているかの度合いを示すもので、企業の経営上の財務的健全性を表示します。この健全性は一般的には、自己資本比率(=自己資本/総資本×100%)で表示され、この比率が50%を越えている事が望ましいとされています。

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