個人事業形態か法人形態かの判断について
個人事業形態と法人形態(株式会社形態)とを比較した場合の
法人形態のメリットとデメリットは以下のようになります。
1.法人形態のメリット
1)個人事業(所得税)と法人(法人税)との比較によるメリット
- 事業主は、法人から役員報酬を毎月定額で適正額を受け取ることになり、
その役員報酬額は、損金に算入されます。
- 家族従業員についても、労働の対価に見合う支払額は、給与として損金算入できます。
ただし、業務内容に照らして不相当に高額な部分の金額は、損金不算入となります。
- 経営者または、経営者の家族に対して役員退職金を支払うことができますが、
役員退職金は、業務内容に照らして相当な金額である限り、損金に算入することができます。
- 法人の場合、同一生計親族に支払う地代、家賃、利息、旅費等の経費を、
その支払い額が相当である限り、損金算入できます。
- 法人契約の生命保険料は、一定の要件をクリアすれば、損金算入できます。
- 法人の場合は所得区分に対応した一定税率(個人事業の場合は、累進課税)を課税しますので、所得が多くなるほど個人事業者と比較して有利になります。
- 青色申告法人の場合、事業年度に生じた欠損金については、
7年間(現行法上9年間)の繰越控除が認められます(個人事業者の場合は、3年間)。
2)経営上のメリット
- 家計と事業が明確に区分される事になるので、経理処理が明瞭化されることにより
金融機関をはじめとして関係先に対し信頼性を高められます。
- 法人として存続することになる事から、企業イメージと信用力が高まるので、
個人と比較して営業活動や人員募集が行いやすくなります。
- 取引先、金融機関からの信頼性が高まるので、借入金、ファンド等の資金調達が、
個人と比較してしやすくなります。
- 法人組織になるので、従業員持ち株制度等により
従業員の帰属意識(経営参加意識)を高めることができます
(個人事業の場合、どうしても事業主の懐を増やすという観念がつきまといます)。
- 事業用財産が、株主により持分所有されるので、個人と比較して事業承継がしやすくなります。
2.法人形態のデメリット
1)税務上のデメリット
- 接待交際費について、資本金額ごとに損金算入限度額が定まっており、
それを超える金額については損金に算入されません。
- 法人事業税においては、個人事業税のような事業主控除額の制度がありません。
- 法人住民税は、所得金額の有無に関わらず、
会社規模により一定額(均等割額)が課税されます。
- 固定資産税の負担調整率は、個人と比較して法人の方が一般的に不利です。
- 不動産取得税において、法人には個人のような軽減措置の適用がありません。
- 取引において個人と法人の区分の厳格化が求められ、
区分があいまいだと税務上経済的利益の供与を認定されて課税される場合があります。
2)その他のデメリット
- 法人設立費用が、相当程度かかります。
- 法人になると、決算公告が義務付けられます。
- 役員変更、本店移転などの登記事項の変更等は、
そのつど法務局への登記が求められ、登記費用等が発生します。
- 法人は、社会保険への加入が強制されるため、社会保険料の負担が発生します。
- 法人の記帳や決算、申告は、会社法や法人税法により厳密な処理が求められるため、
会計事務所に依頼して指導を受けるのが一般的です。そのための費用が発生します。
- 法人としての業績評価を行うために、事業計画を前提とした
業績管理(目標と評価の管理)の仕組みづくりが求められます。
3.個人事業形態か法人形態かの判断ポイント
以上のように、法人形態については、個人事業形態と比較してメリット、デメリットがあります。従って、一概に法人形態が良いとか悪いとかは言えません。創業時の時代背景や創業の業種及び規模そして創業時に関係する条件(与件)によって、直面する状況や課題が異なるからです。
個人形態かそれとも法人形態かの判断のポイントとしては、今後の事業展開をどう考えるか?即ち、新規取引先を開拓して事業成長を目指すのか、あるいは一定の事業規模を確保することによって雇用を初めとする地域社会への貢献を担うのか、あるいは税金支出を法人税等にする事によりお金の使い方を工夫するのか、創業しようとする事業内容など、今後の事業の方向性を慎重に吟味する事が形態判断のポイントになります。
一般的には、個人事業形態で創業し、収入等のメドが立ち事業基盤が安定してきたところで、法人成りしていくやり方が良いと思います。
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