(3)豚肉の部位
料理用の豚肉としての部位は次の6つに分けられ、値段の高い順に説明すると以下のようになります。
1)ヒレ肉
肉質が優れているうえに、1頭からごく少量しかとれないため、値段が最も高い部位肉です。
このように高く評価されるのは、希少価値もさることながら、日本人の柔らかい肉志向が強く影響していると思われます。
肉質は、ほぼ均等で最高に柔らかく、脂肪分が少ないのが大きな特徴です。上品で淡泊な持ち味は広く愛好され、老人や子供、成人病や太りすぎが気になる人などに好適です。
ソテー、ロースト、バター焼き等色々と使えますが、何と言ってもヒレカツがベストです。ころもをつけ、大量の油で揚げる日本独特の豚料理は、脂肪の少ないこの部位が合うようです。
2)ロース肉
ロース肉は、キメが細かく、適度に脂肪がある柔らかい肉質と風味のよさが特徴です。
ロース肉の切り口はビロードのようにつやがあってきめ細かく、特有のピンク色をしています。
形もよくそろうので、ブロック、厚切り、スライスとどんな料理にも適し、和洋中の豚肉料理全般に使えます。
ソテーやしょうが焼きなどに多様されています。ごく薄切りにしたものはすき焼きやしゃぶしゃぶにも使われています。
3)肩ロース肉
ロース肉と同質の上級肉ですが、首に近づくにつれて筋肉のキメが粗くなり、肉質は落ちていきます。
ブロック、切り身、スライス、ひき肉とあらゆる処理に対応できる利用範囲の広い部位です。
ほど良い脂肪もあるので、焼肉、すき焼き、豚かつ、蒸し煮、シチュー、炒め物、ゆで豚など和洋中のほとんどの調理に適合します。
なお、大きなブロック肉を使う場合は、牛肉と違って、中まで完全に火を通すことが調理のポイントです。
4)もも肉
豚の後肢の太い部分が、もも肉で用途も広く需要も高くなっています。
もも肉は、うちもも・しんたま・そともも、に分けられます。
うちももは、赤身の塊肉で、表面の脂肪も少ないのが特徴で、カツレツに使用されています。
しんたまの肉質は、柔らかい赤み肉で脂肪が少なく、ヒレ肉についでビタミンB1が多いのが特徴で、ステーキや焼肉などに使われています。
そとももは、きめがやや粗く、肉質も硬めな事からひき肉やスライスして炒め物などに使われているようです。
5)うで(肩)肉
腕を中心とした部位で、肉質はややキメが粗く、硬くて筋が多いです。
多少脂肪があり、うまみ成分を多く含んでいるので、味は農厚です。
肉質が硬く筋っぽいので、できるだけ薄く切るのが調理のポイントです。
スライス肉は炒め物や焼き肉、豚汁などに、角切りはシチューやカレーなどの煮込みに向きます。 筋の多い部位も圧力鍋を利用して長時間じっくりと煮込むと、結合組織のコラーゲンがゼラチン化して柔らかくなり、独特の持ち味のある料理になります。
5)ばら肉
ばら肉は、ロースの下側の部位で、三枚肉とも呼ばれるように、断面は赤味と脂肪が三層で、この層が同じくらいの厚さでバランスの取れたものが上質とされます。
脂肪あっての豚肉と言われますが、その点では肩ロースと並んで最も豚肉らしい部位の代表格です。硬くなく、コクのある濃厚な味わいが特徴です。
豚肉の脂肪は、融点が低いので、その特性を生かしたばら肉料理(角煮・シチュー・カレー・炒め物他)が数多くあります。
以上が主な豚肉の部位ですが、食用としてはこの他に、タン(舌)、カシラニク (ほお肉)、ミミ(耳)、トンソク(足)、レバー(肝臓)、ハツ(心臓)等が使用されているようです。